高度難聴で聴覚障害6級の手帳を持ってらっしゃる現在76才の女性。
昨年の2月に相談に来られたときに測定した語音明瞭度(語音の聞き取りテスト)の結果です。
右耳は90dBHLで75%の明瞭度 右の90dB以上は音が強すぎるとの訴えで中断しました。
左耳は100dBHLで45%の明瞭度でした。
この方はこの時、新宿のある補聴器専門店で両耳40万前後の小型耳穴式補聴器「CIC」と呼ばれる機種を購入したばかりでした。
コロナが話題になり始めた頃で、新宿まで相談に行くのは不安とのことで当店に来られました。
主訴としては、補聴器を入れてもあまり会話が聞き取れない、特に左は入れても変化を感じないとのことでした。
問題点はまず、高度難聴にも関わらずCICという小型補聴器を選択している点。
それから手帳を所持しているのに、自立支援法による補装具支給についての情報を知らされていない点。
右はまぁ使えなくはないというレベル、左は明らかに出力不足でどうにもならない・・・
聞けば買ってからまだ1ヶ月とのことだったので、今なら機種交換も間に合うので購入店によく相談したほうがよいと助言しました。
しかし、その後このお客様からは何の音沙汰もなくなってしまいました。
それからはご存じの通り、緊急事態宣言などでますます足は遠のいてしまったのかも知れません。
それから1年が経過し、この方が再度来店されました。
本人は1度当店に来たことは完全に忘れていました。
今度は本人の意志ではなく、周囲の友人が心配して連れてきたのでした。
以前は1人で来られていたのですが、どうも1人での行動は難しくなってきているような雰囲気を感じました。
以前持っていたCIC補聴器は話題にすら上がらず、全く存在すら忘れているようです。
今回は骨伝導式の集音器を持参していましたが、全く会話が成り立ちません。
聴力測定の結果は以前と大きな差は見られませんでした。
しかし、語音明瞭度の結果は・・・
1年前、最高で75%聞き取れていた右耳が、今回は25%!、左も大幅に低下しています。
おそらく、この1年補聴器を使う事なく過ごしてしまったのではないでしょうか。
入れても役に立たない高額補聴器を買わされてしまい、新たに買い直すことも躊躇して集音器でガマンしてしまった結果がコレ。
きちんと聴力に見合った補聴器を使い続けていれば、ここまで言葉の聞き取りが急激に落ちなかったのではないでしょうか。
自立支援法で支給される高度難聴用の機種を調整して装着したところ、ゆっくりめなら普通の声で会話できるようになりました。
役所への申請を進める方向で話がまとまりました。
同行していたご友人も安心された様子。
本当に残念でならない事案・・・・
この1年の空白期間がなければ・・・・と思ってしまいますね。
1年前、この方にCICを販売した都内の某専門店、責任は重大です!