ここ最近、骨伝導補聴器についての記事にアクセスが多かったので再度記事にしてみます。
最近では骨伝導式の音楽用ヘッドホンなどが発売され、話題になっていることも影響しているのでしょうか。
私も家電量販店で音楽用のものを試聴してみました。
耳が解放されているため、周囲の環境音は普通に聞こえる状態を維持できるので、ウォーキングやランニング中の音楽鑑賞には良いのかも知れません。
しかし、量販店内の騒がしい環境ではそれなりに音量を上げないと良く聞こえませんでした。
また、骨伝導の場合は「振動」で音を伝えていますので、当然音量を上げると振動も強くなります。
その状態で長時間使うと、少々疲労感も強いのではないかとも感じました。
中には、「痛い」と感じる方もいるかもしれません。
一方、補聴器ではどうでしょうか。
骨伝導補聴器では、上の画像のような「メガネ式」が一般的です。
フレームの、耳にかかる部分(耳の後ろ)に振動板があります。
この振動板から、効率よく骨に振動が伝わるようにする必要がありますので、「音」の調整と同時に「メガネ」のフレームのフィッティングも重要になってきます。
簡単に言うと、やや「キツめ」にフィッテイングしないと、上手く音が伝わらないので、慣れない方だとやはり少々痛いと感じることが多いでしょう。
メガネ以外には、カチューシャ型があります。
このような形状をしており、やはり耳の後ろの部分に振動板が当たるように装着します。
主に小児が使用することが多いです。
どちらのタイプも、基本的には「伝音難聴」で使われるべきものです。
伝音難聴とは、内耳には障害、機能低下が見られず、外耳~中耳に何らかの障害、機能低下が見られるものです。
聴力図で見ると、このような事例です。
縦軸の数字が聴力レベル
横軸は周波数です。
赤い〇でつながっている線は、気導聴力。
[ のマークが骨導聴力を示しています。
<、や>のようなマークで示されている場合もあります。
ヘッドホンで測定した聴力では、およそ50dBになっていますが、
骨伝導で測定したときには、10dB程度となっていることを表しています。
内耳では比較的しっかり聞き取れているが、外耳~中耳の音が伝わる過程において何らかの障害がある可能性が認められる、と言って良いでしょう。
このようなケースにおいて、骨伝導補聴器は役に立ちます。
しかし、このような純粋な伝音難聴の場合は、補聴器を検討するより先にまずは耳鼻咽喉科の受診をしなければなりません。
外科的な治療で改善する可能性があるためです。
それでも改善が見込めない場合に、初めて骨伝導補聴器の適用となるでしょう。
このケースのように、ヘッドホンで測定した値も、骨伝導で測定した値も、どちらも低下しているようなケースは、感音性難聴と診断される可能性が高い。
このような場合は、骨伝導補聴器を利用するメリットは少ないです。
通常の気導式補聴器を使用した方が良いと思われます。
骨伝導式は、常に振動しているために機械にかかる負荷が高く、気導式よりも故障が多く発生しがち。
また、耳の後ろに装着する必要があることも、故障が増える原因となります。
夏場など、特に汗をかきやすい時期は注意が必要。
耳の後ろなどは、頭から汗が流れる道筋になりやすいため、内部に汗などが侵入して腐蝕、錆などによる故障が多く発生しがちです。
気導式補聴器でも、耳かけ形などは耳の後ろに装着しますが、構造上、骨伝導タイプよりも小型化しやすく、また密閉度も高く作成することができるため、最近では汗による故障は減少傾向です。
そのため、骨伝導補聴器を使用する必要が生じた場合は、通常の補聴器よりもメンテナンスに気を遣う必要があるでしょう。
結論としては、音楽用ヘッドホンではメリットもあるかも知れませんが、
補聴器として使う場合、ご自身の聞こえの低下が伝音性のものであり、外科的治療で改善が困難というケースを除いて、あまりメリットはないと考えてよいのではないでしょうか。