補聴器は高い!?

 

補聴器ってなんでこんなに高いのか、との質問を良く頂きます。

 

全国平均では恐らく1台10万円~12万円程度になるだろうと思うのですが、中には1台50万円以上、両耳にしたら100万円を超えてしまう機種も存在します。

 

その違いは一体何なのか?

10万円の補聴器では聞き取れない言葉が、100万円の補聴器なら聞き取れるようになるのか、という疑問が湧いてくるのは当然ですね。

 

その答えは・・・・完全にYES・・とは残念ながら言い切れない。

しかし、NOというわけでもない。

 

高額な機種になると何が違うのかと言いますと、ざっくり言うと"雑音処理能力"の違い。

 

マイクから入力された音声をデジタル信号に変換し、会話音声と環境音(機械騒音、交通騒音など)を分離、その中から会話音声を際立たせるような音声処理を施します。

その際に、どの程度背景の騒音を抑制できるかが価格差のひとつの要因となります。

 

さらに、上述のような会話音声と機械騒音のような"定常騒音"は分離が比較的容易ですが、突発的な衝撃音や、ファミリーレストランの中のようなガヤガヤした騒音、スピーチノイズは抑制が難しくなってきます。

 

スピーチノイズはそもそもが会話音声ですから、機械騒音のように分離して抑制することが困難なわけです。

 

そこで、今度は補聴器のマイクに指向性をもたせてスピーチノイズを抑制します。

 

この指向性の機能にも価格差が表れます。

単純に後方からの入力音を抑制するもの。

最も大きな会話音声を追尾してフォーカスするもの。

周囲の騒音レベルによって、指向性とサラウンドが自動に切り替わるもの。

フォーカスする角度がより鋭角になって、対面して会話している人に集中しやすいなど・・・

 

こうした機能差により、騒がしい環境での聞き取りが改善するという意味において、高額機種の方が聞き取れる可能性が高まると考えることができます。

 

元々健聴者では、ある程度騒がしい環境であっても会話することができるのは、聞きたい音声に集中する、不要な音声は無意識のうちにフォーカスから外しているから。

 

高機能な補聴器は、その脳の働きを機械で補おうとしているわけです。

 

しかし、それはあくまでも使用する方の持っている聞こえの能力を、より楽に引き出せるということに過ぎません。

 

聴力の低下に伴って、言葉を正確に聞き分ける力も衰えてくる事があります。

聞こえてはいても、何を言っているか明瞭に分からないと言う場合、いくら大きく聞こえるようにしても歪んだ音が大きくなるだけで、やはり聞き分けられないというケースもあります。

 

そうしたケースでは、高い金額を払えば明瞭に聞き取れるというのは間違い。

ご自身が持っている"言葉を正確に聞き分ける力"の限界は超えられないからです。

 

今後の医学の発展で内耳の有毛細胞を完全に再生できるようになれば可能でしょうか・・・・

 

ただ、こうしたケースでも高額な補聴器は意味がないということではなく、より疲労感が少ないという意味で使用価値はあります。

騒がしい環境での会話は、集中力を要しますので大変疲れますから。

 

 

一方で、周囲の環境音が聞こえた方が良い、というケースもあります。

 

当店のお客様で、ある高度難聴の方が言っていたのですが、

補聴器がデジタル化され、高性能になってからは常に抑制がかかったような音で不自然さが拭えない。

アナログ補聴器では、そんなことはなかった。

近くの声も、離れた声も距離感がつかめない。

救急車のサイレンが聞こえても近いのか、遠いのか分からない。

運転時にタイヤの音などが聞こえなくなった、等々。

 

これらは、調整次第である程度は解決できる問題ではあります。

何でも周囲の音を抑制すれば良いわけではなく、距離感だったり、方向感を得られることも重要だろうと思います。